ロレックスは非常に緻密に設計された時計であり丈夫で精度もよく不具合も少ないです。また、明らかにメンテナンスのことまで考え抜かれた作りになっており技術者にとっても非常にオーバーホールがしやすい時計でもあります。

しかし、どの時計にも同じことが言えますが、メンテナンスの時期を過ぎると様々な影響が出てきます。

そこで日々オーバーホールに携わる技術者の立場からよく見かけるロレックスの不具合について症状別にまとめてみました。少しでもご参考になれば幸いです。


目次


時計の秒針が動かない

リューズでゼンマイを巻き上げる際の感触が異常に軽い

<原因>
ゼンマイ切れの可能性が高いです。当店にご依頼を頂くロレックスの不具合では一番多い現象です。軽く振ると針は動くことが多いです。

<修理方法>
ゼンマイ交換が必須です。基本はオーバーホールも行う必要がありますが4桁ロレックスやデイトナ以外のムーブメントは構造上全体を分解せずともゼンマイを取り出すことが可能です。当店ではオーバーホールから1,2年程度しか経過せずゼンマイ切れの影響で他の歯車等が傷んでいない場合は部分修理としてゼンマイのみ交換することも可能です。

↑ゼンマイが切れると巻き上げる感触がなくなります

ゼンマイを巻き上げる感触はあるが秒針が動かない

<原因>
歯車等内部パーツが破損していることが考えられます。稀にネジが緩んで歯車に挟まっているだけのこともあります。また、長期間オーバーホールを行っていない場合は潤滑油の劣化が極限まで進行し動かないこともあります。軽く振っても針が動き出さないことが多いです。

Cal.3000系では秒規制レバーが折れたことによって動かなくなる不具合も比較的多く見られます。

<修理方法>
オーバーホールを行ったばかりでネジが外れている場合以外はオーバーホールが必要です。

↑Cal.3000の秒規制レバーが折れると、テンプに当たってしまったままになり秒針が動きません(画像はテンプを外した状態です)
↑折れた秒規制レバー

リューズによる巻き上げができない

<原因>
巻上車という自動巻機構のパーツのホゾあるいは歯が折れていることが多いです。歯車が動いてしまって歯車同士が噛み合わず巻き上げできなくなります。軽く振ると針は動くことが多いです。

<修理方法>
巻上車の交換が必要になります。オーバーホールを行う必要があるかどうかは前回オーバーホールからの期間、潤滑油の状態によって変わります。

↑巻上車のホゾ折れ。リューズによる巻き上げができなくなります。無理に巻くとリューズそのもにに負荷がかかって破損につながるのでご注意下さい

すぐに止まる

<原因>
潤滑油が劣化している場合が多いです。多くは精度が遅れに出ます。劣化が進行していると歯車のホゾが摩耗している場合もあります。また手巻の場合はゼンマイが切れていることもあります。(手巻の場合はゼンマイの外端部が切れることも多く、その場合は巻き上げもでき時計も動きますがトルクが極端に弱まっており止まるのが早いです)稀にネジが緩んで歯車に挟まっていることもあります。

<修理方法>
オーバーホールが必要です。パーツ交換が必要になる場合もあります。

↑潤滑油が劣化しパーツの摩耗も進行するとムーブメント内部に削れて粉状になった切粉が多数付着します

時計が遅れる・進む

<原因>
上記「すぐに止まる」と同様潤滑油が劣化している場合が多いです。パーツが摩耗して交換になる場合もあります。その他ロレックスではあまり見かけませんが日差数分単位で乱れる場合は磁気が強く入った可能性もあります。下記動画で収縮運動をしているヒゲゼンマイが帯磁してしまうとヒゲゼンマイ同士がくっついてしまって稼働が不安定となり1日で数分も進んでしまいます。稀なケースとしてはテンプの耐震装置のバネが外れ精度が大幅に乱れていたこともありました。

↑画面上部で激しく回転している部分がテンプです

<修理方法>
オーバーホール間もない時期での帯磁や耐震装置のバネ外れ以外はオーバーホールが必要です。パーツ交換が必要になる場合もあります。


時計を振るとカタカタ、シャカシャカと異音がする

<原因>
潤滑油の劣化によって自動巻機構のローター(回転錘)と呼ばれるパーツの真が摩耗しガタついてしまう「ローターガタ」を起こしている場合が多いです。自動巻が機能しにくくなるので巻上効率が低下し、時計が止まるのも早くなります。また地板と擦れて地板のロジウムメッキが剥がれてしまうこともあります。その他ごく稀にネジが外れている場合もあります。

<修理方法>
ネジやパーツの外れの場合は前回オーバーホールからの期間によってオーバーホールが必要かどうか変わります。ローター真が摩耗している場合は交換及びオーバーホールが必須です。

↑摩耗したローター真。潤滑油の劣化が原因です
↑ローターガタの状態が長く続くと擦れた部分のメッキが剥がれ地の素材が露になってしまいます。

巻き上げると内部でバシャッと音がする

<原因>
レディースおよびボーイズモデルに起こる不具合です。コハゼというゼンマイの逆回転を防ぐパーツの先端が摩耗しており、ゼンマイを巻いてもバシャッと音がしてゼンマイが解けてしまいます。

<修理方法>
オーバーホールとともにコハゼの交換が必要です。

↑コハゼ先端部の摩耗。巻いてもラチェットが効かずにゼンマイが解けてしまいます

時刻合わせ(針回し)ができない・しにくい

<原因>
潤滑油の劣化やカレンダー早送り禁止時間帯の操作を繰り返すことにより負荷がかかりやすい小鉄車あるいはツヅミ車の歯が欠けてしまいます。そうなるとリューズを回しても歯車同士が噛み合わず針が回せなくなったり、カレンダーの早送りができなくなります。ガリガリと音がすることもあります。折れた歯数によっては時々空回りはするものの針回しやカレンダー早送りができることもあります。

<修理方法>
オーバーホールとともに小鉄車あるいはツヅミ車の交換が必要です。

↑折れた歯が別のパーツを傷めてしまうこともあります

リューズを引く際のクリック感がない

<原因>
裏押さえというパーツが折れていることが多く、レディース及びボーイズのロレックスで時折見かける不具合です。リューズを引いてもカチッカチッではなくズルっとした感触になります。潤滑油の劣化により負荷がかかりやすくなって折れます。折れずに外れただけで済む場合もあります。

<修理方法>
オーバーホールとともに裏押さえが折れている場合は交換が必要です。

↑異変を感じたらあまり動かさない方が賢明です

リューズがねじ込めない

<原因>
リューズ内側とチューブ外側それぞれに切ってあるネジ山が摩耗することによりねじ込みができなくなります。磨耗を防ぐためにはリューズをねじ込む際まっすぐに、そしてゆっくりねじ込むようにしてください。斜めになったり、強く押し込みながらねじ込むとネジ山同士が擦れて磨耗を早めます。

<修理方法>
リューズ及びチューブ交換が必要です。ロレックスのリューズは非常に高価なためリューズ・チューブ交換が必要になると修理代も高額になることが多いです。前回オーバーホールからの期間によってオーバーホールが必要かどうか変わります。

↑リューズがねじ込めなくなると水や湿気が入り放題になってしまうため速やかに修理にお出し頂くことをオススメします

リューズが取れてしまった

<原因>
リューズは巻真と呼ばれる棒状のパーツを介してムーブメントとつながっています。リューズが取れてしまうのにはいくつか原因があり、単に接着が緩んで巻真から外れてしまった場合や巻真が折れてしまった場合、あるいはリューズのカシメが緩んでしまった場合などがあります。また一見破損しているように見えても大丈夫なケースもあります(下記2番目の画像参照)

<修理方法>
接着が緩んでいる場合は再度接着します。巻真が折れている場合は巻真のみを交換すれば大丈夫です。リューズのカシメが緩んでしまった場合は、締めても再度緩んでくるため交換となります。オーバーホールが必要かどうかは前回からの経過年数や内部の状態によります。

↑カシメ部分が割れてしまったケースです。この場合はリューズ交換が必要となります
↑破損しているように見えますが、根元がネジ込み構造になっており接着が緩んで外れたケースです。交換ではなく修理可能です。

ベゼルが回らない

<原因>
ベゼルの内側に汚れが溜まることで動かなくなります。

<修理方法>
洗浄を行えば元通りになりますが、かなり年数が経過していることが多くほとんどの場合はオーバーホールも必要になることが多いです。

↑内部は思った以上に汚れが溜まっています

ベゼルが両回転してしまう

 <原因>
逆回転防止機能付きベゼルにも関わらずベゼルが逆回転してしまうのは、内部に入っているクリックスプリングの破損が原因です(アルミベゼルの場合)。

<修理方法>
クリックバネの交換およびケース洗浄が必要です。

↑アルミタイプのベゼル内部にはこのようなベゼルクリックスプリングが入っています。先端が摩耗すると逆回転することを止めることができなくなります(セラミックタイプは方式が変わります。ちなみに当店ではパーツ入手ができないためセラミックタイプのベゼル修理はお受けすることができません)

おしまいに

日々オーバーホールに携わる立場からロレックスの不具合を症状別にまとめてみました。

ロレックスのムーブメントは優れているがゆえにかなりダメージを負っていても正確に時を刻み続けます。

もし少しでも異変を感じ、この記事に掲載している症状が出た場合は速やかにご使用を控えオーバーホールをご検討ください。

またロレックスはパーツ交換が発生すると大幅に費用が変わってきます。できれば上記症状が出る前に定期的なメンテナンスを行うことがお財布にも一番やさしいです。

以上、技術者が解説するロレックスの不具合について【症状別原因と修理方法】でした。
ご愛用のロレックスを末長く大切にするための参考になれば幸いです。