「自動巻きの時計をいつでも使えるようにワインダーに入れっぱなしにしている」
「ワインダーって時計に悪いの?それとも良いの?」

お客様からこのようなお話やご質問をいただくことがよくあります。ネットには様々な情報が溢れておりお客様自身も迷いながらご使用されていることも多いようです。

日々時計を分解している修理技能士の現場視点から申し上げると、「常にワインダーにかけっぱなしにするのはパーツの摩耗を早めるためあまりオススメしません。ただし、週末だけの限定的な使用であれば大いにアリ」です。

常時使用をオススメしない理由:自動巻き機構の潤滑油の劣化が顕著

↑OMEGA Cal.1120(ETA Cal.2892-2ベース)の自動巻ブロック

現場でムーブメントを分解していると、前回オーバーホールからまだ3年程度なのに「自動巻機構だけ潤滑油の劣化が激しい」「パーツが異常に摩耗している」という時計に出会うことがあります。お客様にお話を伺うとかなりの確率で「使わない時は常にワインダーにかけている」というケースが見受けられます。

多くのワインダーは数時間稼働→数時間止まる、を繰り返しており24時間365日動き続けているわけではありませんが、機械の状態を見るとワインダーに入れっぱなしというのは機械にとって負担が大きいのかなと感じます。

↑摩耗した自動巻機構の「切替車」。ホゾが摩耗してくびれたようになり折れる寸前の状態です。

「時計を止めないためのワインダー」が、結果的に時計を傷つけ高額な修理費用がかかる原因になってしまうのは非常にもったいないという印象です。

また、「腕時計はずっと動かしていないとダメ」と思われている方もいらっしゃいます。以前はそうしないと油が固まるなどと言われたこともあったようですが、現代の時計には高品質な化学合成油が使用されており(もちろんオーバーホールの際も同様)1ヶ月に1回動かしてあげるくらいでも潤滑油が固まってしまうことはまずありません。

では、ワインダーはまったく不要かというと「使い方によっては大いにアリ」という立場です。むしろ、当店のお客様にも多いのですが「平日は毎日身に着けている方が週末(土日)だけワインダーにかける」という使い方は非常に理にかなっていると思います。

一般的な自動巻き時計のパワーリザーブ(稼働時間)は2日前後(約40〜50時間)です。金曜日の夜に時計を外すと月曜日の朝には止まってしまっており、週明けの忙しい時間に「時刻合わせ」や「カレンダー調整」をするのが面倒……という方も多いのではないでしょうか。そんな時にワインダーは使えば時計への負担を最小限に抑えつつ手間の解消というワインダー本来のメリットを最大限に活かすことができます。

↑スピードマスターに搭載のCal.1152(ETA Cal.7750ベース)。オメガの刻印が入ったパーツがローター(回転錘)で、腕の動きに合わせて回転することでゼンマイが巻き上がるしくみになっております。
ROLEX Cal.3135
↑ロレックス デイトジャストやサブマリーナ等に搭載のCal.3135。ロレックスの特徴でもある赤い切替車が見えます

以上、時計修理技能士の視点で質問の多いワインダーについてまとめさせていただきました。

時計修理技能士の視点で1点だけ付け加えれば、時にはリューズで巻き上げて時刻や日付を合わせることも行っていただきたいなと思います。情緒的なことではなく、以前より「手巻きした際の感触が重い」「何か引っかかる気がする」など変化に気がつきやすいからです。前回オーバーホールから4年程度が経過し、違和感をお感じになられた場合はダメージのないうちにオーバーホールをご検討いただくことをオススメいたします。

(備考)パーペチュアル機能を搭載した複雑時計等は設定し直すのに非常に手間がかかってしまいます。その場合はワインダーを使用するメリットの方がデメリットを上回るため使用を推奨します。当記事はあくまでも当店がオーバーホールを行っているオメガ、ロレックスユーザー向けの記事であり、ワインダーの使用について迷っているオメガ、ロレックスユーザーのご参考になれば幸いです。