自動巻の時計で突然リューズを巻く感触がスカスカと軽くなり、その後いくら巻いても時計が動かなくなってしまった場合、そのほとんどの原因はゼンマイ切れによるものです。時にはバシャッと音や感触が手に伝わることもあります。実はこのトラブル、機械式時計の不具合の中でも特に頻発する代表的なケースの一つなのです。

下記画像は切れてしまったゼンマイの様子です。ゼンマイは普段香箱(こうばこ)と呼ばれるパーツにギュッと縮まった状態で入っており、下記画像はその蓋を外し、香箱の芯(香箱芯)とゼンマイの切れた部分を取り出したところです。動力源が失われるためこれまでどんなに順調に稼働していても時計は止まってしまいます(自動巻の場合)。

ゼンマイ切れ
↑自動巻の時計は中心部分が切れることが多い一方、手巻は外端部が切れることも多いです。外端部が切れた場合はある程度ゼンマイが巻かれるため時計は動くことも多いですが、トルクが弱くなるため精度は低下します

機械式時計の進化の歴史は、さまざまな機構の発明や開発とともに各パーツの素材の進化でもありました。ゼンマイも初期のころは鉄製でしたが、より耐久性がありより切れにくい素材へと進化してきました。それでも金属である以上、金属疲労などで突然切れてしまうことがあるのです。メーカーでは消耗品扱いとしてオーバーホールのたびに交換することが多いです。

ゼンマイ切れ
↑外端が切れた手巻きのゼンマイ。ゼンマイを取り出すとこんな形状をしています(自動巻も同様)

ゼンマイ切れが起きたらどうすればいい?

ゼンマイが切れたときの衝撃は思いのほか強く、連結している歯車の歯が折れたり変形してしまうこともあります。よって詳細な点検が必要なため基本的にはオーバーホールが必要になります。

ただし、ロレックスのムーブメントであるCal.3130系は、ゼンマイ部分にアクセスしやすく他の歯車も点検しやすい構造のためオーバーホールから1~2年で突発的なゼンマイ切れに見舞われてしまった場合は部分修理での対応も可能です。

一方、スピードマスターに搭載されているCal.1150系(ETA Cal.7750系)はゼンマイが最深部にありほぼすべて分解しないと取り出せない構造のためオーバーホールになってしまいます。

OMEGA ETA Cal.7750
↑ETA Cal.7750ベースのOMEGA Cal.1164
OMEGA ETA Cal.7750
↑ETA Cal.7750ベースのOMEGA Cal.1164。クロノグラフ機構。ゼンマイはさらに下の階層にあります。

ここまでの記事をお読みいただき「ゼンマイ切れかもしれない」と心当たりがございましたらぜひメンテナンスをご検討ください。