1. 「電池を入れたばかりなのに…」その症状、故障ではありません!
「電池を新品に交換したばかりなのに、数日〜数ヶ月でまた止まってしまう…」
こうして当店にご依頼いただくオメガのクォーツ式時計(シーマスターやコンステレーション、デ・ヴィル等)では、ほとんどの場合、消費電流という針を動かすのに流れる電気の量が大きくなっています。
「電池の不良かな?」「壊れたのかな?」とご不安になるかもしれませんが、実はこれ、時計内部の潤滑油の劣化が原因であることがほとんどです。
2. クォーツ時計も止まる?その主な原因
「クォーツ=電池で動くから機械のお手入れは不要」と思われがちですが、クォーツ時計の中にも針を動かすための歯車(機械部分)が存在します。
電池交換してもすぐ止まってしまう原因は
- 潤滑油の劣化
歯車をスムーズに動かすための潤滑油が劣化して乾いたり固まったりすると歯車が回転する上で大きな抵抗がかかります。 - 消費電流の増大
抵抗が大きくなっている状態で歯車を無理やり動かそうとするため、通常以上のパワーを消費してしまい、容量が決まっている電池の消耗が早まります。また、一定以上の消費電流を超えると、電池の力で歯車を動かすことができる瞬間とできない瞬間が生まれ、その結果、時計がどんどん遅れるようになったり、電池は切れていないのに時計が止まるようになります。現場の感覚では「すぐ電池が切れて止まってしまう場合」と「電池は残っているのに時計が動かない場合」は半々くらいという印象です。どちらも潤滑油の劣化が原因です。
3. クォーツ時計にもオーバーホールが必要なの?
結論から申し上げるとクォーツ式時計も定期的にオーバーホールが必要です。機械式時計(自動巻き・手巻き)は3〜5年でのオーバーホールが推奨されますが、クォーツ式時計の目安はだいたい8年に1回程度とされております。機械式時計よりも長いのは、クォーツ式時計はごく弱い力で稼働しており、歯車の回転数やパーツにかかる負荷が小さく摩耗の進行速度も遅いためです。
当店では年数もしくは電池交換後1年以内に止まってしまうようであればオーバーホールをご検討ください、とお伝えしております。
- 放置は厳禁!
「電池交換しても動かなくなってから直せばいい」と放置してしまうと、歯車が擦り減ってパーツ交換が必要になったり、最悪の場合は電子回路に負荷がかかりすぎて故障し交換が必要になってしまうこともあります。 - 液漏れによってダメージが拡大することも
時計が止まってしまったまま放置することも厳禁です。電池が切れたままの状態が続くと漏液することがあります。オメガに搭載されているムーブメントの場合、電池と接触するマイナス端子と電子回路が一体になっていることがほとんどであり、電子回路交換が必要になってしまうこともあります。
4. 技術者だからこそ知っている意外な盲点
オメガのクォーツ式時計に日々接して感じるのは、ブレス(金属バンド)の不具合が多いことです。ピン&チューブ方式が多いのですが、そのピンを横から細い棒等で押すと簡単に抜けてしまうことがあります。この状態だと突然ブレスが外れて時計の落下につながります。
また、留め具(クラスプ)が下記の画像のような方式の場合はネジの接着が緩んでいることも。こちらも外れると落下につながります。他にもクラスプバネが劣化して留めが緩くなったりすることも。
クォーツ式時計の場合は機械式時計よりもメンテナンス間隔が長く、10年以上ノーメンテナンスの個体も多いです。そのため内部機械は大丈夫でも外装の劣化が進行してしまうのです。できれば半年に1度は洗浄していただければベストです。時計本体は水につけずバンドのみ振り洗いするだけでも汚れが取れますのでぜひお試しください(ぬるま湯に中性洗剤を1-2滴たらして洗浄するとより効果的です。その場合は洗剤が残らないようご注意ください)。
それから使用している電池の種類にもご注意いただきたいです。安価な海外製の電池は経験上液漏れしやすいです。国産各社は漏液を防ぐ特許を取っており、100%ではありませんが間違いなく漏液しにくいです。愛用している時計にこそ国産電池を入れてほしいなと思います。
クォーツ式時計は精度がよく使い勝手も非常にいいですが、その分放置しがちになってしまうのもまた事実かと思います。末永くご愛用いただくためにも時には気にかけていただければ幸いです。

