「一日中腕に着けていたのに翌朝になると時計が止まっている……」
このような「パワーリザーブ(稼働時間)が短くなった」というご相談をオメガのオーナー様からよくいただきます。
特にシーマスターやスピードマスターなどに多く搭載されている、自動巻きムーブメント(ETA Cal.2892系やETA Cal.7750系など)をベースとしたモデルで多く見られる症状です。
実はこのトラブルの原因の多くは「ある共通のパーツ」にあります。それは「切替車(きりかえぐるま)」という自動巻を構成する歯車です。
自動巻の時計は、腕の動き(ローターの回転)をゼンマイを巻き上げる力に変換するしくみを持ちますが、その中核をなす重要なパーツが「切替車」です。この切替車が機能しないと巻き上げる力に変換できず、時計を外すと早く止まってしまうのです。
下記画像は機能しなくなってしまった切替車です。左が正常な切替車で右がホゾが摩耗しくびれてしまった切替車です。潤滑油が劣化したまま使用するとこれほどまでに削れてしまいます。
ただこの現象の厄介なところは、自動巻機構は時計を動かす機構とは別系統のため「リューズを手で回してゼンマイを巻くとまぁまぁの精度で規定時間動き続ける」ことも多いという点です。そのため「時計自体は壊れていないのかな?」と判断が難しく不調を見過ごしてしまいがちになります。
手巻きで動くからと使用を続けると、削れた金属粉がムーブメント内に散らばって他の歯車にダメージを与えたり、最終的にはホゾが折れて止まります。その頃には切替車の交換だけにとどまらないケースも多いです。
「前はもう少し動いていたような気がする」「仕事中腕に着けていて夜外すと翌朝には止まっている」といったことに思い当たる節があり、前回オーバーホールから4年程度経過しているようであればオーバーホールをご検討ください。

